内側から壊れてゆく社会
ピザ屋のチラシは検挙されない。ところが「イラクへの自衛隊派遣反対」という思想信条の表明は逮捕される。もちろん思想信条の逮捕は憲法違反だ。だから容疑は住宅侵入となる。でもならば、ピザ屋のチラシ撒きはなぜ住居侵入に該当しないのか? 基地の敷地に足を踏み入れることは、なぜ許されないのか? 警察に通報した管理者は、個々人のポストを言ってみれば覗いたわけで、プライバシー侵害をもし理由に挙げるのなら、なぜその管理者の行為は抵触しないのか? 著者である宗像のこの素朴な疑問と問題提起に、反論できる人がいるのならぜひやってほしい。少なくとも僕にはできない。たとえディベートの練習だと割り切ったとしても、「矛盾だと思うのですが?」と宗像に訊かれたら、その場で絶句してギブアップ。絶対に勝てない。 言い換えれば、今この国が進んでいる方向は、まさしくそのレベルなのだ。ところがそのレベルが、どうやら民意には圧倒的に支持されて、我が世の春を謳っている(中略) 引き返せるポイントは、僕にももうわからない。あるいはもう、その地点は踏み越えてしまったのかもしれない。でも誰にも計測できないかぎり、やはり抗い続けることが大事なのだ。まだ、間に合うと信じながら。
(「図書新聞2720号2005年4月2日発行」より)