現代日本の暗部を露呈する記録と証言
少しでもこの国の前途にくらい影を感じたら、少しでも人間同士が血を流し合う戦争に嫌悪を覚えるなら、そして少しでも平和という二つの文字にこだわりを持つなら、この本を手にしてほしい。イラクへの自衛隊派兵が強行された昨年の2月、東京都立川市で起きた自衛隊官舎ビラまき逮捕事件を描いた本書は、わが国の民主主義と自由、そして市民の権利がいかに危うい状態になっているかを如実に教えてくれる。
著者は、逮捕者が所属しっている市民団体「立川テント村」の支援者。自身が「あまりにも多くの、そして予想もつかないことが一度に起きていた」と語る警視庁公安の逮捕・家宅捜索が始まった直後から、仲間たちの救援活動に奔走して一審で無罪を勝ち取るまでの日々が、たんたんと力みもなく描かれている。だがそこに示されている事実の一つ一つは決して見過ごすことはできない。
また、逮捕者3人の手記も合わせて掲載されているが、そのうち1人の女性に対して取り調べの公安が「二重人格のしたたか女」「立川の浮浪児」などと罵倒を浴びせ、彼女の実家の親には「娘がヤクザの使い走りをしている」などとウソの電話をしている事実が記されている。
こんな「ヤクザ」以下の公安が大手をふって市民の平和的な運動に介入し、本来ならそれをチェックすべき裁判所も検察も何もしない。テレビも公安の筋書き通り、何やらものものしく逮捕者の顔を実名入りで流す。著者が記すように「見せしめ」に加担しているのだ。読み終えると、ビラをまいただけで実に75日間も勾留される時代とは何なのかを、つくづく考えさせられずにはおれない。
(週刊金曜日 2005年4月1日号)