池田潤子著

『くつろいで、くつろいで、とことんくつろいで』

四六判上製・248頁 定価1800円+税
今、社会全体が、便利さと引き換えに、心の通い難い不自然な現代へと大きく変わりつつあります。この中で人としてどう生きるか、他者とどう関わって生きるかを考え、本来からだに備わっている自然の能力を目覚めさせ、活き活きと生きられるからだを育てていく!

 四十余年にわたり著者が追い求めてきた究極のからだのあり方とは? 体操を通して日常生活のみならず、人間関係、心のあり方までが変わる!

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内面育てる「体育」実践  (2006年6月18日/南日本新聞・書評欄)

「リラクゼーション」「癒し」。ぎすぎすした社会の中で心身ともに疲れきった現代人は、「くつろぎ」を求めてさまざまな言葉を生んできた。だが日常を振り返ってみると、くつろぎが生活にどれだけ定着し、人間を癒しているだろうか。本書は、言葉だけが先行してしまった「くつろぎ」を体操で具現化しようとする一冊だ。著者がこれまでに著した体操の解説やエッセーなども盛り込んだ。
 鹿児島市出身の著者は、日本女子体育短期大学卒業後、高校の体育教師を9年間務めた。
 1962年、野口三千三・東京芸術大学名誉教授(故人)が提唱する野口体操と出合う。体の力を抜き、重力に任せて体を揺らす独特の体操法は、身体だけでなく、心にもしなやかさとゆとりを生み出すという。
 「体育界のアウトサイダー」と呼ばれた野口氏の哲学にひかれ弟子入り。劇団の基礎訓練などで講師を務め、89年にイケダ自然体操を旗揚げ。国内外でワークショップを続けている。
 本書で紹介しているイケダ自然体操は、寝たり立ったりという基本姿勢や、二人一組で行なうものなど、さまざまな形態がある。一方で体操を学ぶ生徒との語らいからは、生活の中のさまざまな行動に体操が取り入れられ、外面だけでなく内面も変わっていく様子が語られている。
 なぜ自然体操で内面まで変わるのか。著者は親や教師の表情をうかがって行動する子どもたちや、子どもに自由を与えない大人など、現代社会の人間関係を、自身の体験を基に述懐している。そんな関係は、人間が本来持っていた愛情や信頼感が科学の進歩で変化し、不自然になったことが原因と指摘。自然の力と一体になる自然体操こそが、本来の能力を引き出し、人間関係だけでなく、社会全体をも元通りにしてくれる、と説明する。
 イケダ自然体操は人間そのものを変える体操といえそうだ。体を動かすことで自分の内面と対話しながら育てていく、本書は本当の「体育」の意味を教えてくれる。


この体操で性格が変わるかもしれない
レッスンが終わっての帰り道、大倉山の駅近くまで来ると、生徒のOさんが追いついてきて、息を弾ませながら私に言いました。
O「先生、私、もうショックで!」
私「どうしたの。何があったの?」
O「今、Sさんたちと一緒に体操の話をしながら歩いていたのですが、そうしたらSさんが、『この体操で性格が変わるかもしれない』って言われたんです。八十歳になって性格が変わるかもしれないと本気で言われたんです。もうドキーンとして、からだ中がショックで!」
私「そうだったの。そんなことを言われたの……」
私は、Sさんの前向きのエネルギーに感応するOさんのすばらしい感性と活力にもまた感動を受け、紅潮したOさんの顔を見つめながら、いつかSさんの言われた言葉を思い出していました。
S「私の性格はとても暗いのです。ところがこの前、同窓会に出席したら、『あなた変わったわね。明るい表情になったわ。若いときからいつもキツイ顔している人だったけど』って友達に言われたんです。自分ではあんまり変わったと思っていなかったのに、びっくりしました。からだが楽になって、気持ちも前よりのんびりできるようになったからでしょうかね」
楽しそうに語るSさんの顔は、とても八十歳とは思えないつやつやした肌です。
「この体操で性格が変わるかもしれない」とは、よく言ったものです。
 Sさん万歳! 人間万歳!           (本文より)

〈著者紹介 池田潤子

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