著者は、高校時代から福祉の現場に深くかかわってきた。高校を休学し施設で障害を持つ人たちと共に暮らした。大学を卒業した後は養護学校、福祉センターで働く一方、いろいろなグループを主催し、チェルノブイリの被ばく者との交流など外国でも積極的に活動。現在は社会福祉法人理事、短大教授を務めている。その著者が、障害を持つ人や弱い立場の人との日常的なかかわりを折々にふれ書き記し、それを集大成したものだが、読み進むうちにそれが表現することの重さ、深さに次第に打たれ圧倒されてくる。書かれていることは、実にさまざま。あちこちに話は飛ぶが、一貫しているのは、人の気持ちを細やかなひだまで大切に、もろい1本の糸をも丹念に手繰り寄せようとする、強さと優しさである。
(毎日新聞1997年6月5日・生活家庭欄「BOOKほん」より)